生活保護と債務整理(自己破産)は同時にできる?生活保護費は借金返済に充てられないが手続きは同時OK
新型コロナウィルス感染拡大の影響で収入が減ったり、失業したことが原因でやむを得ず借金を背負ってしまった人も多いのでは無いでしょうか?
その中には、安定した収入がなく、借金の返済が難しくなってきたら「生活保護を受けよう」と考えている人も少なくありません。
生活保護とは、生活困窮者に対して、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長するために国が定めた制度です。
そんな生活困窮者を守るための制度ですが、「生活保護を受給したいが、借金があっても申請できるか?」とか「生活保護費を借金返済に充てることはできるのか?」など申請するにあたって疑問が生じる事があります。
その際に何をするべきなのか、生活保護と借金の関係について解説します。
とくに次のようなお悩みをお持ちの方はぜひ参考にしてくださいね。
- 借金がある場合でも生活保護はもらえる?
- 借金を踏み倒して生活保護もらってもいい?
- 生活保護で借金返したらバレる?
それでは詳しく見ていきましょう。
生活保護とは?お金に困っている人が最低生活の保障をしてもらえる制度
生活保護とは、日本国憲法第25条に記載のある「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に基づいて制定された公的制度で、最低生活の保障と自立の助長を図ることを目的として、 その困窮の程度に応じ、必要な保護を行うとされています。
この生活保護を受給するためには、次の4つの条件に該当する必要があります。
- 家財や自動車など価値のある財産として利用可能な資産を所有していないこと
- 何らかの理由で就労することが出来ない環境であること
- 国からの公的融資や支援制度が利用できない状態であること
- 家族や親戚などからの援助を受けられない状況であること
生活保護を受給している期間は、収入の状況を毎月申告するだけではなく、年数回、福祉事務所のケースワーカーが訪問調査を行い、生活に関する指導には従う必要があります。
生活保護を受給するための条件に借金はどんな関係があるの?
生活保護を受給するための条件は、先ほど述べた通りですが、借金の有無に関する条件はありません。
従って、借金があっても生活保護を申請・受給することができます。
生活保護を受給することになっても借金返済の義務はなくならないので要注意!
「借金をしていても生活保護は受けられる」と聞けば「生活保護を受給できれば、これ以上借金を返済しないでも良いのでは?」という勘違いをしてしまう人もいるかもしれませんが、そうではありません。
生活保護を受給できるようになったからといって、自己破産のように借金の返済を免除される訳ではなく、法的には返済義務は残っています。
従って、生活保護を受給しても、それまでにつくってしまった借金は無くならないし、その後の取り立ても継続することになります。
生活保護費から借金を返済できるのか?借金返済に使用はNG
生活保護は、以下の項目のような最低限の生活を扶助するために作られた制度であり、借金を返済するために支給されるお金ではありません。
- 日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱費等)
- アパート等の家賃
- 義務教育を受けるために必要な学用品費
- 医療サービスの費用、介護サービスの費用
- 出産費用
- 就労に必要な技能の修得等にかかる費用
- 葬祭費用
従って、受給した生活保護費から借金返済をした場合は、不正受給に該当する可能性があります。
そもそも生活保護費が支給される理由は、これらの費用に充当されるためであり、借金を返済するために支給されるからではないのです。
また、生活保護費を使って借金返済ができないことは、厚生労働省や自治体のホームページ等にも、以下のような記載がされています。
生活保護費から住宅ローンを返済することは、最低限度の生活を保障する生活保護制度の趣旨から、原則として認められません。
生活保護費を住宅ローンの返済に利用するのは、原則として認められていないので、他のローン商品の返済も同じ扱いとなります。
考えてみれば、至極当然な話ですし、生活保護費は国民が納めた税金で構成されています。
個人が抱えた借金返済に国民の税金を使うことはありえず、認められる事はありません。
どうにもならない借金は、生活保護の前に借金を減らす・なしにできる制度の債務整理の検討をしておく!
まずは、借金が「減らせる」「なくなる」可能性があることをご存知ですか?
その方法が債務整理と言い、主な手続きに、任意整理・個人再生・自己破産の3つが挙げられます。
それぞれ特徴は以下のとおりです。
- 任意整理:債権者と直接交渉し、和解契約を結ぶことで、将来利息や遅延損害金のカット、返済期間の延長などをしてもらう手続き
- 個人再生:裁判所に申し立て、返済計画を認めてもらうことで、借金を5分の1〜10分の1程度に減額してもらう手続き
- 自己破産:裁判所に申し立てることで、原則、一部の債務を除きすべての借金の支払いを免除してもらう手続き
それぞれの詳しい手続きの内容を見てみましょう。
任意整理の手続きの流れやメリット・デメリットを紹介
大まかな流れは、次のとおりです。裁判所を介さず、直接債権者と交渉することが特徴です。
- 専門家へ相談・依頼する
- 債権者に受任通知を発送する
- 債権者に取引履歴の開示を請求する
- 利息の引き直し計算を行う
- 過払い金が発生していると想定される場合は返還請求を行う
- 債権者と交渉し、合意書を作成する
- 返済を開始する
- 借金が複数ある場合は、整理する債務を選べる
- 財産を手放さなくても良い
- 費用が比較的安めで期間も短め
- 家族や会社などの周囲にバレにくい
- 過払い金が発生しているのかが分かる
- 過払い金発生なら今の借金に充てられ、借金0になればブラックにならない
- 個人の信用情報への事故情報記載
- 借金返済の義務は引き続き残る
- 安定した収入がある人しかできない
- 債権者が交渉に応じてくれない可能性もある
- 利息のみのカットのため借金減額の幅が小さい
- 交渉力がないと、失敗する可能性がある
任意整理の流れや手続きの内容は比較的簡単とは言われていますが、交渉事や引き直し計算など、素人ではなかなか難しいと思います。
個人再生の手続きの流れやメリット・デメリットは?
大まかな流れは、次のとおりです。
- 専門家へ相談・依頼する
- 債権者に受任通知を発送する
- 裁判所に個人再生を申し立てる
- 個人再生委員が選任される
- 履行可能性テストが行われる
- 再生手続きが開始される
- 裁判所に再生計画案を提出する
- 書面決議が行われる(小規模個人再生の場合)
- 認可・不認可が決定される
- 再生計画通り返済を開始する
- 住宅ローン特則を使えば、ローン返済が続いているマイホームを残すことができる
- 車(ローンが払い終わっているもの)は残せる
- 借金を大きく減らせる
- 職業制限なし
- 借金理由を特に問われない
- 個人の信用情報への事故情報記載
- 借金返済の義務は引き続き残る
- 安定した収入があることが必須
- 費用が高めで期間も長くかかる
- 手続きが複雑で素人ではかなり難しい
- 裁判所を介するため面倒
- 官報に掲載される
- 保証人に一括請求がいく恐れあり
- 5,000万円を超える借金は利用不可
- 小規模個人再生は、半数以上(人数・債権額)から反対されるとできない
- 給与所得者等再生は、破産・給与所得者等再生をして7年経過が必要
利息カットのみの任意整理よりも借金減額幅が大きいため、借金負担がより軽くなるでしょう。しかしその分デメリットも任意整理よりも大きいです。
全ての債務を整理しなければならず、保証人付きの債務も外せないため、保証人に迷惑がかかる可能性があります。
それぞれの手続きにかかる期間もありますので、早目早目に準備・手続きしましょう。
自己破産の手続きの流れやメリット・デメリットは?
大まかな流れは、次のとおりです。
- 専門家へ相談・依頼する
- 債権者に受任通知を発送する
- 裁判所に自己破産を申立てる
- 破産手続開始が決定される
- 免責決定(同時廃止の場合)
- 破産管財人による財産調査が行われる(管財事件の場合)
- 債権者集会が行われる
- 免責許可・不許可が決定される
- 借金返済の義務がなくなる
- 差し押さえなどの強制執行をされる心配なし
- 手元に残せる財産もある
- 自己破産後に得た財産は没収対象外
- 収入がない無職の方、主婦、生活保護受給者でも手続き可能
- 借金返済から開放されるので人生再スタートが切りやすい
- 家族に直接的な影響はない
- 個人の信用情報への事故情報記載
- 一定額以上の財産は全て没収(処分)
- 手続き中に職業や資格の制限あり
- 手続き費用が高額
- 借金理由が問われ(免責不許可事由)手続きできない可能性あり(浪費やギャンブルなど)
- 手続き中の引っ越しは、裁判所に事前許可を取る必要がある
- 手続き中は、郵便物の中身が全チェック
- 保証人に一括請求がいく恐れあり
- 官報に掲載される
- 家族に手続きする/したことを秘密にするのはは困難
自己破産の手続には、管財事件と同時廃止の二通りあります。
さらに、管財事件には少額管財と通常管財の二通りがあり、個人の自己破産の場合は、そのほとんどが少額管財となります。
また、少額管財か同時廃止かどちらの手続になるかは、裁判所が決定することになります。
同時にもできるが、自己破産の申し立てと生活保護申請はどちらを先に行うのが良いか?
「自己破産」の手続きには、「管財事件」と「同時廃止」の2種類があるとのべましたが、生活保護を申請する場合、どちらから先に手続きをするのでしょうか?
それぞれケースの場合でメリットやデメリットで見てみましょう。
生活保護を先に申請し、自己破産を後から申し立てる場合はどうなるの?
- 税金を滞納している場合、免除を受けた自治体からの差押えを回避できる
- 法テラスなど公的機関を利用した場合、「自己破産」で発生する費用の免除を受けられる可能性がある
- 「自己破産」の手続きをとることで、生活費の確保がしやすくなる
<デメリット>
- 生活保護を申請した場合、ケースワーカーから「自己破産」を先に手続きするよう要求されることがある
- 生活保護を申請した後で引き落としなどにより生活保護費から借金を返済した場合、不正受給と判断される可能性がある
自己破産を先に申し立て、その後に生活保護を申請する場合はどうなるの?
- 不正受給とみなされて、生活保護を打ち切られる可能性はなくなる
- 差し押さえを受ける可能性は無くなり、安心して生活保護を受けることができる
<デメリット>
- 自己破産の手続きを行っても、税金は免責されない
- 万一税金を滞納している場合は、自治体により「差押え」など滞納処分の強制執行を受ける可能性がある
状況によって適した順序は異なるので、「自己破産」の手続きを依頼する弁護士や、自治体のケースワーカーに相談して決めるのがよいでしょう。
生活保護と債務整理は同時に利用OK!それぞれの特徴を把握し自分の借金問題に合った方法で解決していこう
借金がある場合でも原則として生活保護を申請することは可能です。しかし、生活保護費を借金の返済に利用することはできません。
生活保護費で借金を返済すると「不正受給」に該当し、さかのぼって生活保護費の返還を請求される場合がありますので、絶対にやめましょう。
生活保護を受ける場合には、事前に借金を完済しておくことが望ましいですが、難しい場合は「自己破産」等の債務整理を検討しましょう。
借金問題を解決し、毎月一定の生活保護費を受け取れるようになれば、安定した生活基盤を手に入れられるようになり、早期の生活再建が図れます。
借金を抱えたままでは、返済や取り立てなど精神的なプレッシャーもありますので、そこから解放されることで新しい生活とあなたらしさを取り戻しましょう。